この作家が好きな人は問答無用で友達になれた。そんな若かりし青春。
が、あったかどうかは分かりませんが、ある種の読書人にとってセンスを図る物差であるような特別な存在。そのひとりが稲垣足穂であることは間違いないでしょう。
三島由紀夫とか自分を賞賛した作家にたいしても悪態をついたり、こき下ろしたり、先になくなった奥さんを罵倒したり、人間的には本当に性格悪いし、見た目もタコ入道みたいなひとが、あんなモダンで美しい、鉱物のようなカラっとした話をつくっているのを知って、とても感慨深かったことを覚えています。晩年の愛読書は自分の作品のみとかいう話もいい話。個人的には、対談集が面白いのでおすすめです。作品だけでは分からない人間的魅力が感じられるので。さて紹介です。
仮面社発行の限定特装版です。初版発行1970年7月20日。箱入、本体は銅凸画装丁。装丁にも口うるさい足穂先生の美学が結集しています。うちも無縁でない紙の本の危機、この本に関していえば関係なさそうです。図版や文章も豊富で読む分にももちろん良いですが、オブジェとしても棚に映えますね。
お待ちしております!