タイトル通り、荒木家での食事を撮影し続ける写真集。おかずを驚くほどに接写した写真が続きます。
親指くらいに見えるまで拡大されたじゃこ、ピンク色の卵の一粒一粒まで見える明太子、
こってりバターが塗られた齧りかけのトーストなどなど…
ギラギラとグロテスクで生っぽくて、ああいつもの荒木経惟の味だなーと思うんですが、
途中入る短い文章で、妻の陽子氏が亡くなるまでの一ヶ月間に作ってくれた食事の記録だということがわかります。
大切な人の為の料理というのは特別なもので、
おいしいって言ってくれるかな、とか喜んでくれるかな、とか、
完全にその人のことだけを考えながら、その人の為だけの作業で、
ましてや毎日三食作り続けるというのは、想像を絶す程の愛情の深さでないと無理だと思うんです。
陽子氏は自分の余命をおそらく何となくは察知しながら、
それでも愛する夫のために、生きるための食事を作り続けた。
荒木氏はそれを撮り、おいしいと食べて生き、
陽子氏はそんな荒木氏を愛情を持って見つめ、そして亡くなった。
ずっと昏睡状態だった陽子氏が、息を引き取る直前にふと目を覚まし、
荒木氏にあれを作ってあげたかった、これを食べさせてあげたかった、と言ったという話を聞いたとき、
本当に涙が出そうになりました。
死ぬまで愛していたんだなーと。
そして奥付頁の「陽子、1990年1月27日午前11時死去。」という荒木氏の手書きの文で、
荒木氏もまた死ぬまで愛していたんだなーと実感。で、また涙です。
食事をすること、生きるために食べること、愛すること、愛されること、を考えるきっかけになる一冊です。
帯欠、カバー背上部に極小ヤブレありでお値段は18900円。
ご来店またはお問合せお待ちしてます。遠方の方は通販もどうぞ。
→http://ekizo.mandarake.co.jp/shop/ja/item_s-526525.html
担当・岩城