1800年代に彗星の如く現れたペン画家・ビアズリーの作品を見た人々の驚きを想像するのは容易。
初めての登場から200年近く経ってから出会った私もそりゃあもう驚きました。(深夜放送していたケン・ラッセル版「サロメ」にて運命の出会い)
ハートを射抜かれるってああいう状態を言うんだと思います。
…という感じで、私じゃなくても「サロメ」の挿絵=ビアズリーというイメージが強いと思うんですが、
ポスト・ビアズリーとも呼ばれたこちらのアラステアもサロメを描いています。
帯に「高貴なる頽廃(デカダンス)の香り」とありますが、本当に頽廃的。
ビアズリーの描く人物は表情少な目で人間の感情的な部分を敢えて殺している部分がありますが、
アラステアの描く人物は表情豊かで感情的。絶望や悲しみが深く伝わってきます。
また、ビアズリーに比べ人々のドレスや装飾がデコラティブで耽美。ビアズリーみたいに、ちょっと斜に構えて小馬鹿にしたような性描写もなく(巨大な男根とか巨大な尻とか)美しいです。
ポストとかフォロワーとかいう肩書きがついちゃうのはどうしてもしょうがないんですが、ビアズリーよりもアラステアの描くサロメの方が好き…って方も少なくないはず。
何にせよ、ビアズリーの世界観に慣れているととても新鮮です。
サロメの他、同じくワイルドの「スフィンクス」「王女の誕生日」、
また有名な「カルメン」「椿姫」の他、聖書に纏わる作品などたくさん掲載された見応えのある一冊です。
状態は並、帯とプラカバー付。
あまり見かけないので、この機会に是非どうぞ~。
担当:岩城